寄付したら自分の自治体はどうなる?「ふるさと納税」の現状を調べてみた
いまや、おトクだとしてメディアでも取り上げられることの多い「ふるさと納税」。
活用している方が多い一方、気になりながら手付かずの方もいるのでは。
ふるさと納税がどうしておトクなのか、そもそも何のための制度なのか、社会全体にどんな影響があるのか、などモヤモヤした疑問をざっくりと調べてみました。
- ふるさと納税とは
- 「ふるさと納税」制度の目的
- 「ふるさと納税」のやり方
- 「ふるさと納税」は年々増加
- 「ふるさと納税」受け入れ金額が多い自治体はどこ?
- 「ふるさと納税」の返礼品
- 「ふるさと納税」は自分の自治体にもできる?
- 「ふるさと納税」で税収が減っているのはどこ?
- 「ふるさと納税」で減った税収はどうなる?
- 「ふるさと納税」への参加で自分の意見を!
ずいぶん前から話題の「ふるさと納税」ですが、会社員の私は、確定申告の面倒さにずっとスルーしていました。
しかし、昨年末に思い立って初チャレンジ。今年になって届いた豪華な返礼品に、ふるさと納税のおトクさに気づく!
で、同じく会社員の夫にもすすめてみたところ、
「俺はやらない。そもそもふるさと納税の仕組みが疑問だから」 というお言葉が。。
"ふるさと納税をすることでトクになるかもしれないけど、自分の住んでいる自治体の税収が減るから、意味を感じない。" とのことでやらない派とか・・・
なるほど、おトクさだけが強調されているけど、全体的な影響も知ることは必要だなぁと思い、
今回は夫の疑問にこたえるべく、「ふるさと納税」制度の仕組み、現状を調べてみました!
ふるさと納税とは
「寄付金」を支払うことで、その寄付額の最大3割程度の金額相当の返礼品を受け取ることができます。
※自分が住んでいる自治体への寄付の場合は返礼品はありません。
初期費用2000円が別途かかりますが、ふるさと納税での寄付金額※は、払うべき税金から控除されます。
※ただし所得に応じて控除できる上限額が決まっています。
寄付金額<控除上限額 のように寄付金額が控除上限額内であれば寄付金額の全額が控除されます。
寄付金額>控除上限額、のように寄付金額が控除上限を超えてしまうと、控除上限額までしか控除されません。
「ふるさと納税」制度の目的
「ふるさと納税」が目指すものは、地方創生だそう。
地方から都会へ出て働く人が増えていた世の中で、都会に居ながらにして、ふるさとの生まれ育った地方へ「税金」という形で貢献ができるようにすることを目的としてつくられた制度のようです。
もちろん、生まれ育った地方以外でも、自分が応援したいと思う地方を選ぶことも可能。
選ぶ・選ばれる、というアクションが発生することから、地方自治体が競争して魅力的な地域づくりをしていくことも目的とされているそうです。
ふるさと納税の理念は以下を参照ください。
「ふるさと納税」のやり方
「楽天」や「さとふる」など、いろいろなサイトから、「寄付」が可能です。
ポイントが貯められたりと、それぞれおトクなサービスがあります。
ワンストップ特例制度※が導入され、確定申告をする必要がなくなったこともあり、より手軽に始められるようになっています。
※ワンストップ特例制度・・・
確定申告をしなくてよい会社員などで、かつふるさと納税先の自治体数が5団体以内の場合、ふるさと納税を行う際に各ふるさと納税先の自治体に特例の適用に関する申請書を提出すれば確定申告の必要がありません。
「ふるさと納税」は年々増加
総務省の最新データによると、令和3年度(令和3年4月1日~令和4年3月31日)の実績は、受け入れ金額が約8,302億円(対前年度比:約1.2倍)、受け入れ件数は約4,447万件(同:約1.3倍)と伸びています。
平成27年(2015年)より、ワンストップ特例制度が導入されたこと、ふるさと納税枠が2倍になったことなどにより、大幅に伸び続けています。
「ふるさと納税」受け入れ金額が多い自治体はどこ?
令和3年度の総務省データによると、受け入れの多い自治体トップ5は、上から紋別市(北海道)、都築市(宮城県)、根室市(北海道)、白糠町(北海道)、泉佐野市(大阪府)の順でした。
1位の紋別市の受け入れ額は15,297百万円、この令和3年の紋別市の歳入総額が42,532百万円となっており、ふるさと納税の寄付金が歳入の約36%もを占めているということになります。上位自治体にとっては、もはや非常に大きな税収源ですね!
返礼品は「ほたて」。魅力的でした…!
「ふるさと納税」の返礼品
寄附金の募集に要する費用の合計額が、寄附金受領額の合計額の50%相当以下の金額であることが、定められています。
過去にはとても豪華な返礼品の競争が過熱していましたが、
現在では、「ふるさと納税」の返礼品の調達にかかる金額が、寄付金の30%以下基準であることが求められているようです。
つまり、MAX30%の金額とすると、
仮に、2万円でふるさと納税に寄付をした場合、返礼品は最大30%の6,000円相当のものをもらえる、ということ。
2万円分が払うべき税金から控除され(ふるさと納税で寄付した分だけ、税金を払わなくてよくなる)、さらに6000円分の物品を返礼品としてゲット。
初期費用2000円なので、6000-2000=4000円分のトク という計算がたつわけですね。
さらには、地場産品基準というものがあり、基本的にはその地方にかかわる産品である必要があります。
有名な名産品のある自治体は有利ですね!
受け入れの多い自治体トップ5のうち3つが北海道の地自体というのは、魅力的な海産物が返礼品という理由もあるのかも…
ちなみに、
区域外産の肉を区域内で保存等した「熟成肉」や、区域外産の米を区域内で精米・ブレンドした「無洗米」、区域外製の家具や電気製品等について区域内で抗菌加工や検品等の仕上げ工程のみを行ったもの、などは、令和4年9月の自治体あての文書「ふるさと納税制度の適正な運用について」で注意喚起が上がっており、
このようなものを返礼品にすることは、今後難しくなっていきそうです。
「ふるさと納税」は自分の自治体にもできる?
こちらは、寄付自体はできますが、返礼品はもらえない。ということになります。
自分の自治体だけに「ふるさと納税」を利用して寄付した場合も、初期費用の2000円はかかりますので、返礼品がもらえない上、2000円がかかる、ということになります。
自分の自治体にふるさと納税するメリットとしては、寄付金の用途が指定できることですが、
特に指定をしなくてもよいという方は、「ふるさと納税」以外の方法で寄付をためしてみるのもよいかもしれません。
「ふるさと納税」で税収が減っているのはどこ?
ふるさと納税で住民税の税収が減るのはどこの自治体でしょうか?
令和3年度 ふるさと納税に係る住民税控除の適用状況 によると、一位は断トツで東京都。次いで神奈川県、大阪府、愛知県と続きます。
やはり、大都市を抱える都府県で、大きな金額が動いているようで、
これについては当初の国の目的に合致しているといえます。
一方で、税収が減る=住んでいる人への自治体のサービス低下につながるのでは?という懸念もありますよね。
「ふるさと納税」で減った税収はどうなる?
こちらは私も今回調べて知ったことですが、
地方交付税の交付団体であれば、減少分の75%は国から補填されるとなっています。
そのため、地方交付税交付団体については、国からの補填があるために、急激な税収減、地方サービスの低下などの影響は、そこまでないと考えられるのではないでしょうか。
問題は、不交付団体の自治体です。
令和4年現在、地方交付税の不交付団体とされているのは 73団体あります。
都道府県単位では唯一、「東京都」は地方交付税不交付団体です。
その他は72市町村。
こちらの総務省資料に発表されています。
https://www.soumu.go.jp/main_content/000826808.pdf
このような自治体では、「ふるさと納税」の活性化による税収の減少の補填が一切なく自治体の歳入減に大きくかかわることから、自治体ホームページなどでふるさと納税の是非を投げかける記載がされております。
基本的には、都会から地方へ、というお金のバランス再配分が目的のため
都市部の税収減についてはある程度想定されていたことかもしれません。
私の住んでいる地方自治体は、交付団体だったため、「ふるさと納税」を行うことで税収は減りますが、地方交付税で75%が補填されるため、自治体サービスにそこまで悪影響を与えるとは考えられませんでした。
不交付団体の自治体では悩ましい問題となっており
とくに不交付団体に住む課税世帯(年収300万以上課税世帯)の税金が流出、貧しい世帯はそもそも税金がほとんど納めていないため「ふるさと納税」を利用したメリットも受けられない上、自治体のサービス低下によりネガティブ影響を受ける可能性がありますね。
確定申告かワンストップ特例制度の利用かで、控除税は変わる
通常、確定申告の場合は、
確定申告を行うと、ふるさと納税を行った年の所得税から控除され、
加えて、ふるさと納税を行った翌年度分の住民税が減額(控除)されます。
ワンストップ特例制度利用の場合は
所得税からの控除は行われず、控除額の全額が、ふるさと納税を行った翌年度の住民税の減額(控除)されます。
ちょっと面倒ですが、自治体への税収減も気になる・・・という方は、あえてワンストップ特例制度を利用せず確定申告をしてみる、というのもひとつです。
詳しい流れは総務省のサイトを参照ください。
「ふるさと納税」への参加で自分の意見を!
「ふるさと納税」自体は、地方の活性化や魅力を知るうえで有効です。
「おトクだから」というだけでなく、自分がお世話になった地方への「応援」を表明することもできますし、この制度があることで、地方がより魅力的な地方を作るよう、競争が発生することで、日本全体が活性化するのは良いことです。
一方で、今住んでいる地域への貢献、一緒に地域を支え作っていく、という気持ちを持つことも重要です。
「ふるさと納税」意味を理解したうえで、ふるさと納税への参加方法や、どの程度の金額を寄付するか、自分の意見を反映して決めていけるとよいですね。